ニュースなどを見ているとチラホラと見かけるようになった「ペロブスカイト太陽電池」ですが、WBSでも2024年3月20日に「世界中で競争激化 次世代の太陽電池開発日本に勝機は」というタイトルで特集されていました。
「ペロブスカイト太陽電池」を少し調べてみると、主な原料である「ヨウ素」は日本とチリで世界の90%以上を生産していて、そのうち日本が29%のシェアを持っているうえに、さらに推定埋蔵量では日本が世界一を誇っていることが分かりました。
また2024年5月末には、経産省がペロブスカイト太陽電池を始めとした「次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会」を立ち上げて、早期社会実装に向けた今後の戦略を策定し始めました。
資源がないといわれる日本が、圧倒的なシェアを持っていて、日本政府が後押ししている「ペロブスカイト太陽電池」関連を抑えておくと、将来の投資利益に繋がりそうなので諸々調べてみました。
まさに「国策に売りなし」って言うことになればいいな!
そもそも「ペロブスカイト太陽電池」とは?
「太陽電池」と言われると、広大で平面な土地にいっぱい設置されている表面が濃い青色っぽい板(結晶系シリコン太陽電池)を思い浮かべるのですが、原料にシリコン(ケイ素)を使っているため、重さもあり・曲げることが出来ないので広大な土地に設置する事になってしまうようです。
一方「ペロブスカイト太陽電池」は、ペラペラに薄く出来て・軽くて・曲げることができる上に、低コストで生産できる次世代の「太陽電池」です。
また「ペロブスカイト太陽電池」は、桐蔭横浜大学の宮坂教授が開発した日本発の技術で、主原料の「ヨウ素」は日本が世界2位の生産国なので、資源の少ない日本が強みにすることができる期待の製品になりそうです。
「ペロブスカイト太陽電池」のメリットとデメリット
ただ、何であれメリットとデメリットがあると思うのですが、電気設備工事や再生可能エネルギー事業など営んでいる株式会社エネテクが運営しているサイトで、メリ/デメが詳しく説明されていました。(2024年07月04日に情報が更新されていました。)
メリット1.さまざまな形状に適用できる
メリット2.軽く薄い
メリット3.エネルギー変換効率もシリコン型に匹敵
メリット4.低コスト
メリット5.発電コストが抑えられる
メリット6.弱い光でも発電できる
メリット7.日本国内で材料が調達可能
メリット8.CO2排出量を抑えられる
メリット9.光透過性がある
メリット10.色を変えられるデメリット1:寿命が短い
デメリット2:安全性に課題がある
デメリット3:面積を大きくするのが難しい引用元:【2024年最新】ペロブスカイト太陽電池とは?基礎知識と開発動向|企業省エネ・CO₂削減の教科書(株式会社エネテク)
デメリットになっている部分は、色々な研究機関や企業が頑張っていて、研究レベルでは解決が出来ているようですが、量産化するところにはまだ課題があるようです。
「ペロブスカイト太陽電池」に必要な『ヨウ素』
「ペロブスカイト太陽電池」の大きなメリットの1つが、原材料になる「ヨウ素」で、日本とチリで世界の90%以上を生産していて、そのうち日本が29%のシェアを持っているというところです。
ヨウ素はヨード(ドイツ語(ヘブライ語))とも言い、僕は子どもの頃に赤チン(ヨードチンキ)で怪我した部分を消毒されり、うがい薬に使った思い出があります。(最近はあまり見かけませんが。。)
またヨウ素の光に反応する特性(X線吸収能)を利用して、レントゲン造影剤や液晶ディスプレー用の偏光板など、医療分野を中心に工業、農業分野など幅広い分野で利用されているのです。
『ヨウ素』の埋蔵量
ヨウ素をもう少し調べてみたら、世界の約3割を生産している日本の中で、千葉県がその内の8割を生産していました。(神奈川県に住んでいますが、聞いたこと無かった。)
日本のヨウ素は、地下深くにある鉱床からくみ上げられる水溶性天然ガスを含んだ地下水「かん水」から、天然ガスを採掘する際の副産物として生産されはじめたそうで、海水と比べて約2,000倍もの濃度のヨウ素が含まれているので、経済的に採取できています。
また千葉県における可採埋蔵量が約400 万t と推定されていて、新潟県や宮崎県でも生産しているヨウ素を合わせると、日本のヨウ素可採年数は約500年と言われているそうです。
アメリカ地質調査所(USGS)の「Mineral Commodity Summaries 2024」という色々な鉱物のデータがまとめられている最新資料の、[ヨウ素(IODINE)]の部分を確認してみると、生産量はチリが日本のほぼ倍ですが、一番右の「埋蔵量(Reserves)」は日本がダントツの1位でした。
ただ、地下水を汲み上げる仕組みのため地盤沈下対策などの課題もあり、世界的にヨウ素が必要になっても大量生産をすることは難しいそうです。
逆に考えると、供給制限があるからヨウ素が高く売れるようになるのかな?!
「かんすい」と聞いて、すぐに思いついたのがラーメンに使う「かんすい」だったのですが、ヨウ素に使われているのは「天然ガス鹹水(かんすい)」と呼ばれていて、ラーメン(中華麺)に使う鹸水は、現在は有効成分の炭酸ナトリウムなどから工業的に製造されているそうです。
ただ鹹水(かんすい)とは、塩化ナトリウムなどの塩分を含んだ水のことを指していて、ラーメン(中華麺)に使う鹸水の起源は、中国で偶然「鹹水(塩湖のアルカリ塩水)」を使った製法が発見されたことなので、元々は一緒のようですね。(参考:鹹水、かん水|フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
ペロブスカイト太陽電池 宇宙
「ペロブスカイト太陽電池」だけじゃなく、以前から「宇宙」関連銘柄も注目しているのですが、人工衛星って太陽電池が必須になっているので、軽い方がいいはずなのでググると論文や実証実験がいろいろ出てきました。
宇宙ならJAXA(宇宙航空研究開発機構)と思い、調べてみるとJAXA内の組織「宇宙科学研究所(ISAS)」の資料に「次世代太陽電池:ペロブスカイト太陽電池 | ISASニュース 2022年5月号(No.494)」というのがありました。
やっぱり「太陽光発電が唯一無二の日照中の実用的なエネルギー源であり、ほぼ全ての宇宙機に太陽電池が搭載されています。」と始まり、「ペロブスカイト太陽電池」の紹介が書かれていました。
一般的な太陽電池の宇宙での最大の劣化要因は放射線なのですが、「ペロブスカイト太陽電池」は放射線に対する高い耐久性を支持する結果が多数報告されているそうです。ただ、宇宙応用・地上での実用化の共通課題として、熱耐久性や光耐久性の向上が必要になるものの、「高効率化・低コスト化・高耐久化」が実現されれば期待できる気がしました。
そして2024年秋頃、関西大学が開発した超小型衛星「DENDEN-01」にリコーの宇宙用ペロブスカイト太陽電池が搭載され、国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられた後、ISSから放出され軌道上で約半年間の実証実験が行われるそうです。
この実証実験がいい結果になれば、さらに「ペロブスカイト太陽電池」に期待ができそうです。
「ペロブスカイト/カルコパイライト(黄銅鉱)のタンデム構造を用いた、軽くて曲がる、割れないソーラーパネル」というのも見つけたので、これも調べてみよう。
「ペロブスカイト太陽電池」「ヨウ素」を製造する企業等
ここまで投資先のジャンルとして「ペロブスカイト太陽電池」を調べてきたのですが、主な原料になる「ヨウ素」も日本が主要な原産国になるので、それぞれに関連する上場企業をまとめてみました。
(※リンクは、Yahooファイナンスに飛ばしました。)
「ペロブスカイト太陽電池」関連企業等
- 積水化学工業(4204)
- キヤノン(7751)
- カネカ(4118)
- パナソニックHD(6752)
- アイシン(7259)
- 日本精化(4362)
- 堀場製作所(6856)
- 倉元(5216)
- サムコ(6387)
- 三菱マテリアル(5711)
- フジプレアム(4237)
- ホシデン(6804)
- 日産化学(4021)
- エヌピーシー(6255)
- 富士フイルムHD(4901)
- ニチコン(6996)
「ヨウ素」関連企業等
参考にしたサイト
ペロブスカイト太陽電池
ヨウ素
日本の地下に眠る天然資源ヨウ素 [浅倉 聡]|日本海水学会誌 第 74 巻 第 1 号(2020)(PDF)
水素とヨウ素〜新エネルギーとそのにない手〜 [福田 理]|総産研 地質調査総合センター(1976)
資源産業と地質との関わりを直接学べる 南関東ガス田での見学会の魅力とは -石油技術協会の見学会での実施経験を振り返って(温故知新の旅)- 第1部 南関東ガス田とは : その概要 [徳橋 秀一]|産総研 地質調査総合センター GSJ 地質ニュース Vol. 11 No. 3(2022 年 3 月) 73
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